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プレイヤーから脱皮できない人の4つの特徴

プレイヤーから脱皮できない人の4つの特徴

ダメ上司のありがち「PDCAサイクル」

◇暇になると勘違いするリーダーたち

仕事を任せた後、上司は自分の仕事を部下に渡したので、最初は教えたりフォローしたりで仕事が増える面もあるものの、部下が育てば上司には時間ができます。部下が育てば育つほど、自分が関わらなくとも仕事が進み、あなたは何もしなくとも、チームの成果をあげることができます。

さて、時間ができたあなたは何をしたらいいのでしょうか?

ただ暇になり、ニュースを読んで、たまに会議をしていればいいのでしょうか。部下の状況を把握し、褒めたり励ましたりして部下にだけ頑張ってもらえばいいのでしょうか。それとも、新たに自分のやるべき領域を見つけ、そこに注力すべきなのでしょうか。

これらはすべて、実はプレイヤーの延長線上にある考え方です。部下に仕事を任せ、自分の時間を生み出せるようになったら、プレイヤーの延長で仕事を考えてはいけません。

仕事を任せた後、何をすべきか。それはズバリ「マネジメント」です。部下に仕事を任せられる上司になったら、それは、プレイヤーからマネージャーになるべきタイミングでもあるということなのです。

では、マネジメントとは何でしょうか? 普段、よく使う言葉ですが、問われれば意外と明確に答えられません。日本語に訳すと「管理」です。売上管理、コスト管理、リスク管理、体調管理、管理職(マネージャー)、マンションの管理人……。

「ちゃんと管理しなさい、あなたの仕事は管理ですよ!」

しかし、いったい管理とは何を意味するのでしょうか。辞書には以下のように書かれています。

「組織を取り仕切ったり、施設をよい状態に維持したりすること」

(三省堂『大辞林 第3版』)

「取り仕切る」「よい状態に維持する」とありますが、具体的に何をするかは、これではよくわかりません。「マネジメントの父」と呼ばれるドラッガーは、管理をこう定義づけています。

「マネジメントとは、組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関である」

「マネージャーとは、組織の成果に責任を持つものである」

(ピーター・F・ドラッガー)

ドラッガーは「マネジメント」という概念を考えた人物で、彼の経営学書『マネジメント』をもとに書かれた青春小説『もしも野球部の女子マネージャーがドラッガーのマネジメントを読んだら』(通称『もしドラ』。2009年ダイヤモンド社刊)は、270万部を超えるベストセラーになりました。

この定義からは、マネジメントは「道具」であるということがわかります。しかしまだ抽象的でわかりにくいのではないでしょうか。実は、プレイヤーでやってきた皆さんにとって、非常にわかりやすい考え方があります。ビジネスマンなら一度は耳にしたことがある、ある有名なサイクルです。

◇管理職とは成果を出したい事柄についてPDCAを回す人

それは「PDCAサイクル」です。このPDCAサイクルは、別名マネジメントサイクルと呼ばれます。マネジメントとは、PDCAサイクルを回してスパイラルアップさせ、成果をあげることです。言わずと知れたPDCAサイクルですが、これを使いこなしている人は、現実にそう多くはいません。

①P:プラン(計画)
②D:ドゥー(実行)
③C:チェック(検証)
④A:アクション(改善)

売上管理とは、売り上げをあげる計画を立て、実行し、検証することで改善案を考え、計画を練り直して実行し、そしてPDCAの順番でぐるぐる回し、より売り上げがあがるようにしていく行為です。コスト管理も同様に、コストの使い方について計画を立て、実行し、検証して改善し、また計画へ。体調管理とは、体調を維持するための計画を立て、実行し……(以下同文)。つまり管理職とは、何か成果を出したい事柄についてPDCAを回す人だと言えます。

プランを立て、実行し、検証して改善する。このサイクルを回す。話としては単純ですが、優秀なプレイヤーから、マネージャーに脱却できていない人は、このサイクルが回せていません。よくある4つのダメなパターンを紹介します。

①DDDDサイクル
「計画」を立てず、「検証」もせず、ただ「実行」だけしてしまうタイプです。とにかく行動、即行動、考える前に取りかかる、実行力オンリーの仕事の仕方です。成果をあげるには「行動」が必要不可欠なので、行動を重視するのは悪いことではありません。しかし部下は、あなたが計画を立てずに行動すると、あなたの思考を理解できないため、部下に仕事を任せることが難しくなります。最もプレイヤー的なスタイルと言っていいでしょう。

②PPPPサイクル
管理職になった途端、「行動力」が落ちるタイプです。自分の仕事はもう管理だけで。実行はしなくていいんだ、と「管理」の意味を履き違えて計画を立てることに注力し、計画すれども実行しないというケースです。いくら計画を立てても、実行しなければ成果があがらないことを思い出しましょう。

③PDPDサイクル
プランを立てて実行するのですが、検証するのが苦手なタイプです。イベントの企画を打ったらやりっぱなし。効果検証や改善提案を行わないので、次の年になっても前年の反省を生かせず、同じようなイベントをやってしまいます。「検証」を行うかどうかで、仕事の成長スピードは大きく変わってきます。

④DCDCサイクル
「計画」がないのに「実行」した後、「検証」だけしっかり行うというのは、部下からしたら「後出しじゃんけん」のようなスタイルです。行動の後に振り返り、検証を行う際、計画があればあらかじめ定めた計画どおりに行動できたのか、行動が成果につながったのかを確認することは非常に重要なのですが、計画がない行動を、後になって「もっとこうすれば」とダメ出しばかりされたら、部下はたまらない気持ちになります。

あなたは、この4つのパターンのどれかに当てはまっていませんか?

◇部下に任せる際、PDCAのどれを任せているか?

さて、PDCAサイクルの重要性は理解いただいたと思いますが、ここで1つ質問があります。

「あなたは部下に仕事を任せる際、PDCAのどれを部下に担当させていますか?」

もしも「D(実行)」だけ落としているとしたら、それは本当にもったいないことです。あなたが考えた計画を元に、ただ実行だけする、それでは部下のポテンシャルを引き出すことはできません。計画をつくるトレーニングをする必要があります。

仕事に取りかかる(D)前に、計画をつくらせる。その計画を一緒にみてアドバイスをすることでムダな行動が減り、成果をあげる計画設計ができるようになります。

それができたら「検証」も自分でできるように育てる必要があります。データを集めて成果を確認し、より成果を出すにはどうしたらいいか、改善提案を出してもらうのです。

このようにPDCAサイクルそのものを任せることができると、部下の成長スピード、主体性が飛躍的にあがります。したがって、あなた自身がPDCAサイクルを回せるようになったら、今度は部下がPDCAサイクルを回せるように育成しましょう。

◇どの程度未来に見通しを持てている?

マネジメントができるというのは、「計画性」を高めることでもあります。計画があるから検証することができ、改善に向かうことができます。

計画がなければ、成果が出たとしてもそれがたまたまなのか、狙って取れたのか、判別がつかず、成果の再現性が著しく低くなってしまうからです。

仕事を任せて時間ができたら、上司は「計画性」を高めるべきです。人を動かすには明確な「計画」が必要です。計画がなくても実行できるのは自分だけです。何でも自分でやってしまう人は計画を立て、他人と共有するのが苦手な傾向にあります。

では、あなたはどのくらい先の未来を見据えて計画を立てていますか?

明日の計画を持っているビジネスマンは多いと思います。明後日の計画もおそらく持っているでしょう。ですが、1週間後はどうでしょうか? 1カ月後はどうですか? 3カ月後、半年後、1年後、3年後、5年後、10年後……。先の未来になればなるほど、計画性は乏しくなるのではないでしょうか。

仕事を任せることによってできた時間を、将来の計画立案に費やし、計画を元に実行したら、それを検証しましょう。すると改善点が見つかるので、新たな計画を練り直します。このプロセスを通じて、あなたの仕事の生産性を変えることが重要なのです。

「おのを研ぐ」という表現があります。仕事を「木を切ること」だとすると、ただやみくもに、何の計画もなく木を切るだけでは生産性はあがりません。いつおのを研げばいいのか、どのくらい木を切ればいいのか、計画に基づいて取り組み検証することで、生産性が飛躍的に上がるはずです。毎日生産性を追い求めるからこそ、仕事の質と量は向上していくのです。

では、仕事を任せた後、上司は何をするべきか。それは、まずあなた自身が計画を持ち、実行して検証、改善するプロセスを持つこと。次に、部下にDだけでなく、PDCAサイクルそのものを任せ、部下をマネジメントができる人材に育てること。このサイクルをぐるぐる回すことで次のビジョンが見つかり、さらにPDCAサイクルを効果的に回していくことができます。

そうすれば、あなたは、暇をもてあましたり、誰かのモチベーションアップだけで1日が終わったりすることもありません。取り組むべきマネジメントに着手し、マネージャーへの脱皮を図っていきましょう。